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第2回 小豆島一周ウルトラウォーキング に参加しました (2021/10/30-31)

※こちらの記事は釣りとは関係ない内容です。カテゴライズできるほどの記事が溜まれば、新しいブログを開設します。

 この記事は、人生で初めて24時間かけて100km歩いたときの手記です。長距離ウォークやマラソンの上級者の人が読んでも、つまらない内容かもしれません。1~2回程度しか挑戦したことがない人には、共感してもらえると思います。まだ長距離ウ

ォークに参加したことがない人、挑戦したいと思っている人には、少しでも参考になれば幸いです。

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 マラソン、登山、ウォーキングなどまったく興味がありませんでした。むしろ「しんどい思いをしてまで、何でやるの?」ってくらい、冷めた目で見ていました。そんな私が、40代後半になってひょんなことから100kmウォークに参加することになった話です。

 ある日嫁さんから、小豆島一周ウルトラウォーキングの話を聞かされます。2020年大会に参加した2人の友人が完歩(マラソンで言うところの完走)したのだとか。そのときは話半分で聞いていました。その後、我が家は香川から愛媛に引っ越しをし、そんな話は忘れかけていた8月。嫁さんが夜な夜な歩きに出るようになります。どうやらトレーニングを始めた模様。今年の大会は10月の末だとか。「本気で出る気なの?」と思いつつも「暑い中ご苦労さん」と言いながら傍観していました。

 9月に入ると私に「そろそろトレーニングを始めないと間に合わないよ」と嫁さん。以前から「出てみない?」みたいな話はありましたが、煮え切らいない私にしびれを切らした様子。9月の頭から一緒に夜間ウォーキングを始めます。そこから話はとんとん拍子に進み、アイテムの購入、エントリー、当日までのトレーニングメニューなどが決まっていきます。どうやらペアでエントリーする人は2人同時ゴールが条件みたいです。これは、リタイアなんかしてしまうと一生恨まれそうです。

 9月からほぼ毎晩5kmから10km程度を歩きました。歩くこと自体は苦痛ではないのですが、毎晩1時間から2時間ほどはトレーニングに費やすので、それ自体がちょっとイヤでしたね。中学高校と、ほぼ帰宅部だった私は「トレーニング」というものをあまりやったことがありません。それでも、リタイアすることになったら絶対に「トレーニング不足」を指摘されそうだから、なんとか2か月間続けました。

 大会4週間前に初の20km練習。日中に、自宅から10km離れた道の駅まで行って帰ってくるというスケジュールです。毎晩歩いている短距離とは違って、結構疲れました。「これの5倍かぁ」と思うと少しゾッとしましたね。後々わかることですが、単純にこれの5倍なんて考え方は愚考でした。

 それから約1週間後、突然右膝に痛みが走ります。大会3週間前です。歩けないほどではないのですが、右足着地時に釘を刺したような痛みが走り、歩行体制も不自然に。私だけ夜間トレーニングの回数や距離を減らしたり、サポーターを巻いたりしながら様子を見ました。嫁さんからの冷たい視線。どうか大会までに治ってくれますように。

 大会2週間前に、本番前最大の予行演習として40kmを歩きました。右膝は相変わらず痛かったのですが、整体院でテーピングを巻いてもらい、どうにか歩けそう。朝出発して日暮れまで歩き通しです。なんとか歩き切りましたが、正直に言って「これが限界」だと感じました。膝の痛みなど忘れるくらい、足首やふくらはぎ、足の裏が痛くなり、一歩一歩が苦しみとの戦いでした。本番はこれの倍以上の距離です。もう不安しかありません。

 本番1週間前からは軽めの調整に切り替えます。その頃には膝の痛みもかなり和らいでいました。完治は無理でも、またテーピングをしてもらえば問題はなさそうです。ただ、膝の痛み云々ではなく、純粋に100km歩き切れるかどうかはまったくわかりません。最初の頃は「ただひたすら歩くだけでしょ?」くらいに思っていましたが、トレーニングをしていくうちに、長距離歩くことの苦しみがわかってきました。

 そして2021年10月30日。ついに大会当日を迎えます。

 

 朝5時起床。心配していた右膝は、テーピングのおかげもあって、ほとんど痛みません。朝6時過ぎの電車で高松まで向かいます。現地では前年完歩した先輩お二人がお迎え。小豆島の会場まで車に乗せてもらいます。先輩お二人は個人エントリー。私たちより5分遅れでスタートしますが、あっという間に追い抜かれるんでしょうね。

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<小豆島一周ウルトラウォーキング大会概要>

28時間以内に小豆島一周100kmコースを回ってゴールすること
13:20発、13:25発、13:30発の3組に分かれてスタート
(100kmとは別にファミリーコースや20kmコースの参加者もいます)

途中にはエイド(チェックポイント兼休憩所)が5か所設置されています
第1エイド 21.8km地点
第2エイド 40km地点
第3エイド 54km地点
第4エイド 77km地点
第5エイド 92km地点
上記、第3エイドを午前2:30までに通過しないと途中失格となります

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 私たちペア参加組は13:20にスタート。しばらくは、なだらかな海岸線を歩いていきます。ひとまず目標の第1エイドまでは20km強。初めの頃は「海がきれいだね~」なんて余裕の会話をしながら歩いていました。しかし、しばらくすると急な上り坂が続きます。当然ですが、上った分と同じだけの下り坂も。事前の情報でアップダウンが多いというのは知っていましたが、坂道というよりは山道。想像以上の高低差です。序盤から足にダメージを食らいます。

 自転車のように「上り坂で苦しい分、下り坂で楽ができる」なんてことはありません。緩やかな下り坂ならともかく、急勾配は足への負担が大きく、上り坂の方が楽に感じるほどです。上り坂で疲労が蓄積し、下り坂では足へのダメージが蓄積します。事前練習の20kmと40kmではほとんど平地しか歩いていません。この形状のコースを100km?主催者はドSですか?

 第1エイドに到着した頃には日も暮れかかっていました。高低差のある山道でしたが、20km強をおよそ4時間で歩けました。ほぼ予定どおり。5分差で出発した先輩方は2分遅れで到着。3分詰められました。支給されたチラシ寿司を食べて夜用のウェアに着替えます。もうあたりは真っ暗です。先輩方も一緒に第1エイドを出発したので、この時点で5分の差は無くなりました。

 第2エイドへ向かう道は、海沿いを進むとしばらく土庄町の町中を歩きます。選挙カーを横目で見ながら歩いていくと、途中から前島に入り、島を一周するルートへ。この頃には先輩方は先に行ってしまい、もう見えません。終盤にはそこそこのアップダウンがあり、足は限界状態。途中でコンビニに寄りましたが、そこで前を行っていた先輩方と合流。第2エイド到着は、スタートからおよそ8時間後。40kmを8時間ですのでペースは上々です。旧土庄町役場で弁当(支給)を食べて一休みすると、第3エイドに向けて出発です。このときすでに、嫁さんの足にはマメができていました。

 第3エイドまでは14km。2:30までに第3エイドに到着しないと足切りリタイアですが、時間はけっこう余裕があります。道は相変わらずのアップダウンですが、ところどころに建物や漁港があり、自動販売機で飲料を調達することもできます。40km以上は未知の世界です。足は痛いですが、無心で歩き続けます。全体の半分にあたる50km地点を通過したのがちょうど深夜0時頃。あと少しで第3エイド。それだけを考えながら、なんとかたどり着くことができました。今になって思えば、このあたりはまだまだ、ましな道だったと思います。

 先に到着していた先輩方と一緒に休憩。一度座ると、再び立ち上がることもままならないほど、下半身は壊滅状態です。ここを出ると、次の第4エイドまで23kmもあります。先輩方に遅れること約10分。心の準備をして、再び歩きはじめます。この頃になると、休んだあとの再出発がスムーズにいきません。普通に歩けるようになるまで、少し時間がかかります。途中で少し休みながら、ボロボロの体を精神力だけで前へ進めます。

 第3エイドを出発してしばらくすると、建物すらない真っ暗な道が続きます。もちろん、アップダウンあり。ただでさえ心が折れそうな状況の中、さらなる試練。なんと雨が降り始めました。事前に降水確率はチェックしていましたが、元香川県民の感覚では降水確率50%は降らないのと同じ。降ってもにわか雨程度だろうと、荷物の重量優先で雨具を用意していませんでした。結局、深夜3時頃から降り出した雨は午前8時まで降り続きました。

 闇の中で降り始めた雨。第4エイドまでは大きな休憩場所はなし。追い打ちをかけるように、激しさを増す高低差。点在するバス停などで休みますが、じっとしていたら濡れた体が冷えてしまいます。すぐに出発し、真っ暗な中、濡れながらとにかく無心で前へ進みました。雨雲レーダーを見て、朝まで雨が止まないことはチェック済み。第4エイドが屋根付きの暖かい休憩所なら、雨が止むまで休んで、着替えてから残り23kmを頑張ろう。そんなことを考えながら、いつも以上のペースで歩き続けました。

 日もすっかり昇った午前7時30分。雨は止まず。ようやくたどり着いた第4エイドは、テントが1つ張ってあるだけの簡易的な休憩所でした。トイレを済ませて、支給のサンドイッチと温かいコーヒーを飲んだら、すぐに出発です。雨が止まなければ着替えてもすぐに濡れるので意味がありません。第4エイドから少し進んで、ようやく雨が止み始めた頃に、道沿いの建物の陰で着替えることができました。

 第4エイドから第5エイドは15km。ここまでの道のりを考えたら、屁のような距離です。しかし、雨が降る前から足は限界状態。麻痺して痛みを感じないのならいいのですが、常に激痛です。特に足首や足の裏は切り落としたいくらいに痛みます。雨でずぶ濡れになった靴が、余計に足に負担をかけるのでしょう。足を前に出せるのが不思議なくらいの精神状態で挑んだ15kmは、疲れ果てた心身にとどめを刺すような山道でした。足にたくさんのマメができている嫁さんは、弱音を吐かずに黙々と歩いています。この我慢強さには感服しました。

 第5エイドまでの道のりは、簡単に言えば山の頂上付近まで上って下ってくるコース。前半は「まだ上るの?」ってくらいひたすら上り坂。中盤で「ようやく下るのかな?」と思わせて上り下りの繰り返し。後半はゆったりとした下り坂が続きます。急な下り坂でないのはありがたいのですが、最終の1kmで一気に急降下。一足一足に激痛が走りますが、ゆっくり行っても激痛は激痛。開き直って一気に下ると、すぐそこに第5エイドが待っていました。

 ついにたどり着いた第5エイド。事前の調べでは、これ以降は山道はないはず。そして何よりも、あとたったの8kmでゴールです。ここまで来たら、骨折や肉離れなでもしない限り、諦めるわけにはいきません。体力も精神力もとっくに使い果たしています。もう、この体を押してくれるのは「意地」だけです。長く休むと立ち上がることもできないので、第5エイドは少し休んですぐに出発。あと8kmを残して経過時間は22時間強。嫁さんは24時間切りも狙えそうだと言いますが、もうそんな余裕はありません。ごめんなさい。前に進むのがやっとです。

 第5エイドはアップダウンのほとんどない、町中メインのコースでした。ありがたいですね。しかし、ほとんど上がらない足は歩道の凹凸にも引っ掛かり、段差を踏めば激痛が走り、これはこれで厄介です。ただ、あと少しでゴールだと思えば、あと少し歩けばもう歩かなくていいと思えば、不思議と前に進めるものです。残念ながら24時間切りは叶いませんでしたが、24時間9分56秒で完歩できました。先輩方は23時間30分ほどでゴールできたようです。さすがです。

 もともと体力に自信があるタイプではありません。「気合いだ~」みたいな精神論も大嫌いです。文中でも言いましたが、最後まで背中を押したのはやはり「意地」だと思います。私は四六時中「なんだよこのコース」みたいな文句を言いながら歩いていました。嫁さんは私がいつ「リタイアしたい」って言うかビクビクしていたらしいです。とにかく自分の口から「リタイアする」と言うつもりはなかったんですけどね。リタイアするときは、ドクターストップか、先に嫁さんが「リタイアしたい」と言ったときだけだと決めていました。自分で決めたルールには結構厳しい性分なので、意地で乗り切れたのかもしれません。まあ、嫁さんの根性にはかないませんが。

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 さてここからは、実際に歩いて分かった、小豆島一周ウルトラウォーキングの対策についてお話しします。

 

 最大の敵はとにかく坂道です。初心者の私が言うのもおこがましいのですが、初めて100km歩くって人には絶対におすすめできません。序盤でダメージを与えて、中盤に油断させてからの、後半とどめを刺しに来るタイプのコースです。ほかの100kmウォークを経験してから来るべき場所だと思います。

 今回、私達はランニングシューズで参加したのですが、インソールを使っていません。しかし、いろんな記事を読んでいると、やっぱり必要だと思います。下り坂の足への衝撃は想像以上です。クッション性の高い底敷きがあれば、衝撃も和らげることができるので、足の疲労が軽減されると思います。

 長距離を歩くのには、身軽なほど有利です。ほかの100kmウォークの記事などにも、おすすめの持参物などが紹介されていると思います。それらを参考にしたり、経験者のアドバイスなどを仰いだおかげで「持って行ったけど使わなかった」というものは最小限に抑えることができました。

 逆に失敗したのが雨具です。雨具は雨が降らなければ無駄な荷物になってしまいます。道中にコンビニなどがあるコースなら途中で調達できますが、そうでなければ防水加工の衣料やリュックを使うのがいいと思います。合羽を被っても結局靴は濡れてしまいますので、事前に防水スプレーなどを噴霧しておくと良いかもしれません。まあ、雨は降らないのが一番ですが。

 荷物以外に、もうひとつ重量調整できるものがあります。体重です。恥ずかしながら私の体重は81kg。ウォーキングを2か月続けましたが、1kgしか落とせませんでした。無理なダイエットで筋力まで落としてしまうと本末転倒ですが、高低差のある道のりを100km歩くとなると、体重が重い人は不利です。以前は60kg台だったこともあるので、今の体重よりも10kgは落とせる可能性があるということ。500mlのペットボトル20本分です。それを持って歩くか置いて行くかでは雲泥の差です。

 今回、私はマメはできませんでした。実際に歩いていると、足に違和感が出てきます。「このままだとここにマメができそう」という場所には、休憩所などで事前にテーピングを貼ってガードしました。と言っても、テーピングは持参していなかったので借り物ですが……。必需品ですね。まだ傷になっていない場所だと、絆創膏は剥がれやすいのでテーピングがおすすめです。マメができてしまった場合には、絆創膏で対応するしかありません。その場合も、絆創膏の上からテーピングを貼ると剥がれにくくなるのでおすすめです。

 歩くという行為自体は苦しくありません。たとえ100kmだろうと、走らなければ「これ以上は体力が持ちません」ということにはならないと思います。では何が苦しいのかと言えば「痛み」です。特に、足首、足の裏、ふくらはぎ、膝関節、太ももの付け根あたり。足首がダントツですね。そして衝撃が重なると足の裏が慢性的に痛み始めます。結局「24時間ウォーク」=「24時間痛み我慢選手権」みたいなものです。鎮痛剤は使用限度の4時間毎に服用しました。ほかの参加者が持っていましたが、冷却スプレーなども効果があるかもしれません。とにかく、痛み対策に全力で取り組みましょう。短距離でも足が痛む人は、歩行フォームの見直しが必要かもしれません。

 しかし、涼しい顔をして20時間以内にゴールしている人たちは、足の痛みを感じないんでしょうか?訓練したら痛くなくなるのでしょうか?ただ単に我慢強いだけ?謎は深まるばかりです。


 大会が終わって数日が経ちましたが、まだ膝に痛みが残っています。何か所か足の爪が浮いていますので、おそらく剥がれるでしょう。大会翌日はまともに歩くこともできませんでしたが、普通に生活できるレベルまで回復しました。体重はまったく減りません。身体的な代償は大きいですが、歩き切ったという達成感があるので報われます。リタイアしていたら後悔しかなかったんでしょうね。誘ってくれた嫁さんと先輩方、大会関係者の方々、留守中お世話になったみなさんに感謝です。

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